カメラを始めたばかりの頃、「1段明るくする」「2段絞る」といった表現を耳にして、「段って何?」と困惑した経験はありませんか?実は私も最初はさっぱりわからず、なんとなく雰囲気で聞き流していました。
でも、この"段"という概念を理解すると、ISO・F値・シャッタースピードの関係性が驚くほどスッキリします。まるでパズルのピースがカチッとはまるような感覚で、写真の明るさをコントロールできるようになるんです。
今回は、カメラ初心者の方でも「なるほど!」と納得できるよう、この"段"について丁寧に解説していきます。
そもそも"段"(EV値)とは何なのか?
"段"とは、写真の明るさ(露出)を表す共通の単位のことです。英語では「Exposure Value(EV)」と呼ばれています。
この概念はとてもシンプルです:
- 1段明るくする = 明るさを2倍にする
- 1段暗くする = 明るさを1/2にする
つまり、「段」は明るさの倍率を表しているんですね。2段明るくすれば4倍(2×2)、3段明るくすれば8倍(2×2×2)といった具合です。
カメラの3つの基本設定(ISO感度・F値・シャッタースピード)は、それぞれ異なる役割を持っていますが、写真の明るさに与える影響は、この「段」という共通の物差しで測ることができます。
ISO・F値・シャッタースピードの"段"変化を見てみよう
では、具体的に各設定がどのように「段」で変化するのか見ていきましょう。
シャッタースピードの段変化
段数 | シャッタースピード | 変化の方向 |
---|---|---|
+2段 | 1/60秒 | より明るく |
+1段 | 1/125秒 | より明るく |
基準 | 1/250秒 | - |
-1段 | 1/500秒 | より暗く |
-2段 | 1/1000秒 | より暗く |
シャッタースピードは分かりやすく、速度が半分になれば1段暗く、2倍になれば1段明るくなります。
F値の段変化
段数 | F値 | 変化の方向 |
---|---|---|
+2段 | F2.8 | より明るく |
+1段 | F4.0 | より明るく |
基準 | F5.6 | - |
-1段 | F8.0 | より暗く |
-2段 | F11 | より暗く |
F値は少し特殊で、数値が小さいほど明るく、大きいほど暗くなります。また、1段ごとの変化は√2倍(約1.4倍)ずつになっています。これは絞りの面積が関係しているためです。
ISO感度の段変化
段数 | ISO感度 | 変化の方向 |
---|---|---|
+2段 | ISO 1600 | より明るく |
+1段 | ISO 800 | より明るく |
基準 | ISO 400 | - |
-1段 | ISO 200 | より暗く |
-2段 | ISO 100 | より暗く |
ISO感度は数値が2倍になれば1段明るく、半分になれば1段暗くなります。
実践!等価露出で明るさをコントロール
より実践的な場面で解説します。例えば、こんなシチュエーションを想像してみてください。
現在の設定:ISO 400・F5.6・1/250秒
この状態から、被写体ブレを防ぐためにシャッタースピードを1/500秒(1段速く)にしたいとします。しかし、そのままだと写真が1段暗くなってしまいますよね。
そこで登場するのが「等価露出」の考え方です。1段暗くなった分を、他の設定で1段明るくして帳尻を合わます。
選択肢1:ISOを上げる
- ISO 400 → ISO 800(1段明るく)
- 結果:ISO 800・F5.6・1/500秒
選択肢2:F値を開く
- F5.6 → F4.0(1段明るく)
- 結果:ISO 400・F4.0・1/500秒
どちらを選ぶかは、撮りたい写真の表現によって決まります。背景をぼかしたいならF値を開き、ノイズを抑えたいならISOを抑えめにする、ということです。
露出補正の段も同じ意味
オート撮影時の露出補正でも、同じ「段」の概念が使われています。
- +1補正:カメラが判断した明るさより1段明るく(2倍の明るさ)
- -0.7補正:約2/3段暗く(少し落ち着いた仕上がりに)
ポートレート撮影では+0.3〜+0.7補正、夕景では-0.3〜-0.7補正がよく使われます。
まとめ:「段」を理解すれば写真表現が広がる
「段」という概念は、ISO・F値・シャッタースピードという3つの異なる設定を、明るさという共通の物差しで考えるための便利なツールです。
この概念を理解すると:
- 設定変更の影響が予測できるようになります
- 意図した表現のための設定選択ができるようになります
- 様々な撮影シーンに柔軟に対応できるようになります
最初は頭で理解していても、実際の撮影ではつい忘れがちになるものです。でも、何度か意識して使っているうちに、自然と身体で覚えられるようになります。
次回の撮影では、ぜひ「今、1段明るくしたいな」「ここは2段絞って全体にピントを合わせよう」といったように、「段」を意識してみてください。きっと、これまでよりも思い通りの写真が撮れるようになるはずです!