「川や滝の水を絹のように写したい」「明るい日中でも背景をボカしたポートレートを撮りたい」そんな風に思ったことはありませんか?そんな時に活躍するのがNDフィルターです。でも「そもそもNDフィルターって何?」「種類がたくさんあってどれを選べばいいかわからない」と悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
この記事では、カメラを始めたばかりの方でもNDフィルターの魅力を理解し、実際に使いこなせるように、基本から応用まで分かりやすく解説していきます。
NDフィルターとは?仕組みをわかりやすく解説
NDフィルター(Neutral Densityフィルター)は、カメラのレンズに取り付けて光の量を減らすためのアクセサリーです。「Neutral Density」は「中性濃度」という意味で、色味を変えることなく光量だけを減らしてくれます。
イメージとしては、カメラにサングラスをかけさせるような感じです。人間がまぶしい時にサングラスをかけるように、カメラも明るすぎる環境では光量を抑える必要があるシーンがあります。
例えば、昼間の明るい屋外で滝を撮影する場合を考えてみましょう。水の流れをなめらかな絹のような表現にするには、シャッタースピードを遅くする必要があります。しかし、明るい場所でシャッターを長時間開けると、写真が真っ白になってしまいます(露出オーバー)。そこでNDフィルターを使って光量を減らすことで、明るい場所でもシャッタースピードを遅くできるようになるのです。
NDフィルターを使うメリットと使いどころ
NDフィルターを使うことで、今まで撮れなかった表現豊かな写真や動画が撮影できるようになります。
写真撮影
写真撮影での活用シーンでは、日中の長時間露光が代表的です。滝や川の流れを滑らかに表現したり、雲の動きを筋状に写したり、海の波を鏡のように写すことができます。また、明るい屋外でのポートレート撮影でも威力を発揮します。通常なら絞りを絞らないといけない明るさでも、NDフィルターがあれば絞りを開放にして背景を美しくぼかすことができます。
さらに、街中での長時間露光撮影では、通行人や車を写真から消すこともできます。数分間の露光時間中に動き続けるものは写真に写らないため、まるで時間が止まったような不思議な写真を撮ることができます。
動画撮影
動画撮影では、NDフィルターはほぼ必須アイテムと言えるでしょう。映画のような自然なモーションブラー(動きのブレ)を得るには、シャッタースピードをフレームレート(fps)の約2倍に設定するのが基本です。例えば30fpsで撮影する場合は1/60秒に設定します。しかし、日中の明るい場所ではこのシャッタースピードだと確実に露出オーバーになってしまいます。NDフィルターを使うことで、理想的なシャッタースピードを保ちながら適正露出で撮影できるのです。
NDフィルターの濃度(ND値)の違いと選び方
NDフィルターには「ND2」「ND4」「ND8」といった数値が付いており、これが光量を減らす度合いを表しています。数値が大きいほど、より多くの光を遮ります。
ND値 | 光量減少 | シャッタースピード効果 | 使用例 |
---|---|---|---|
ND2 | 1段分減少 | シャッタースピード×2 | 軽い露光調整 |
ND4 | 2段分減少 | シャッタースピード×4 | 日中ポートレート |
ND8 | 3段分減少 | シャッタースピード×8 | 滝・川の撮影 |
ND16 | 4段分減少 | シャッタースピード×16 | 雲の流れ |
ND64 | 6段分減少 | シャッタースピード×64 | 海・空の長時間露光 |
ND1000 | 10段分減少 | ×1000の露光が可能 | 日中の超長時間露光 |
初心者の方にはND8からND64の範囲がおすすめです。この範囲があれば、日中のポートレート撮影から風景の長時間露光まで幅広くカバーできます。「どの濃度にするか迷って決められない」という方は、まずND16を試してみてください。多くのシーンで使いやすい万能な濃度です。
撮影に慣れてきて「もっと幅広い表現を試したい」と思うようになったら、ND1000のような超高濃度フィルターにも挑戦してみてください。日中でも数分間の露光が可能になり、今まで見たことのないような幻想的な写真が撮れるようになります。
NDフィルターの選び方|固定NDか可変NDか?
NDフィルターは大きく分けて「固定ND」と「可変ND」の2種類があります。それぞれに特徴があるので、撮影スタイルに合わせて選びましょう。
固定NDフィルター
固定NDフィルターは、ND4、ND8など決まった濃度のフィルターです。メリットは光量調整が安定していて画質劣化が少ないこと。特に風景写真や作品撮りをメインにする方におすすめです。デメリットは、濃度ごとにフィルターを買い揃える必要があることと、撮影現場でフィルターを付け替える手間がかかることです。
可変NDフィルター
可変NDフィルターは、1枚でND2からND400程度まで幅広く調整できるフィルターです。リング部分を回すことで濃度を変えられるため、撮影現場での調整が簡単です。動画撮影や旅行での撮影など、シーンが次々と変わる状況では非常に便利です。ただし、極端に濃くすると色かぶりが出たり、画質が若干劣化する場合があります。
写真撮影がメインで画質にこだわりたい方は固定ND、動画撮影や手軽さを重視する方は可変NDを選ぶと良いでしょう。予算に余裕があれば、よく使う濃度の固定NDを1~2枚と、可変NDを1枚持っておくと、あらゆるシーンに対応できます。
NDフィルターを使った作例とおすすめシーン

NDフィルターを使った代表的な作例として、滝や川を絹のように表現した写真があります。ND8~ND64を使って1~30秒程度の露光時間で撮影すると、水の流れが美しく滑らかに写ります。撮影のコツは、カメラをしっかりと三脚に固定することと、水の流れる方向を意識して構図を決めることです。
街中での長時間露光も面白い表現の一つです。ND1000を使って数分間露光すると、歩いている人や走っている車が消えて、まるでゴーストタウンのような不思議な写真になります。平日の昼間に繁華街で撮影すると、普段見慣れた風景が全く違って見えて驚くはずです。
ポートレート撮影では、明るい日中でも絞りを開放(F1.4~F2.8)にして背景を美しくぼかすことができます。特に逆光での撮影では、NDフィルターがあることで被写体の周りに柔らかい光の輪郭を作ることができ、印象的な写真に仕上がります。
動画撮影では、自然なモーションブラーを得るためにNDフィルターが欠かせません。特に屋外でのウェディング撮影や旅行動画では、映画のような滑らかで自然な映像を撮ることができます。
初心者におすすめのNDフィルター
初めてNDフィルターを購入する方におすすめの製品をご紹介します。
コストパフォーマンス重視なら、Kenko NDフィルター PRO1D シリーズがおすすめです。ND8やND16といった使いやすい濃度が3,000円~5,000円程度で購入できます。日本製で品質も安定しており、多くのカメラマンに愛用されています。
動画撮影や手軽さを重視するなら、K&F Conceptの可変NDフィルターが人気です。ND2~ND400まで1枚で調整でき、価格も5,000円~8,000円程度とリーズナブル。初心者でも扱いやすく、YouTubeクリエイターにも多く使われています。

画質にこだわりたい風景写真愛好家には、NiSi NDフィルターがおすすめです。色かぶりが少なく、シャープネスの劣化も最小限に抑えられています。価格は20,000円~30,000円程度と少し高めですが、その分品質も確かです。僕もこのフィルターを使っていますが、可変NDとは思えないくらい色が安定していてとても使いやすいです。
購入する際は、必ず自分のレンズのフィルター径を確認してください。レンズの前面や側面に「⌀67mm」などと書かれているのがフィルター径です。間違ったサイズを買ってしまうと取り付けられないので注意しましょう。
まとめ
NDフィルターは、カメラ初心者でも簡単に使えて、写真と動画の表現力を大幅にアップさせてくれる魔法のようなアクセサリーです。明るい日中でも滝の流れを絹のように撮影したり、背景を美しくぼかしたポートレートを撮ったり、映画のような自然な動画を撮影することができます。
選び方のポイントは、まず自分の撮影スタイルを考えることです。写真メインで画質重視なら固定ND、動画や手軽さを求めるなら可変NDがおすすめ。初心者の方は、まずND16の固定NDフィルター1枚から始めてみてください。
NDフィルターを使い始めると、今まで「撮れない」と諦めていたシーンが撮れるようになり、写真や動画がぐっと上達したように感じるはずです。ぜひ一度試してみて、NDフィルターの魅力を体験してみてください。きっと新しい撮影の楽しさを発見できるでしょう。